肛門のイメージ写真

肛門の治療

当診療科は、肛門と肛門周囲の症状や疾患を中心に診察、検査、治療をしていきます。お尻の周囲というのは、なかなかデリケートな部分でもあるので、異常な状態を打ち明けにくいということもあるかもしれません。ただ、日本人の3人に1人は、痔の症状(痔核、裂肛、痔瘻 など)に悩んでいるとも言われています。つまり、肛門やその周囲でみられる症状というのは、決して珍しいことではないのです。恥ずかしいと思い悩んで経過観察のような状態を続けていれば単に病状を悪化させるだけです。気になる症状があれば、速やかに当クリニックをご受診ください。

以下のような症状があれば一度ご受診ください

  • 肛門から出血がみられる
  • 肛門に痛みがある(排便時、持続的に痛みがある など)
  • 肛門周囲にかゆみがある
  • 臓器のようなものが飛び出すことがある
  • お尻がジクジクしている
  • 便に血液が混じっている(血便) など

扱う主な疾患

肛門周囲皮膚炎

肛門、あるいはその周辺の皮膚に炎症が起きている状態を肛門皮膚周囲炎と言います。炎症が起きる原因としては、排便後にトイレットペーパーなどで肛門やその周辺をきれいにしたいがために拭き過ぎてしまう、シャワートイレの勢いを強くする、もしくは長時間使用するといったことで、皮膚が傷つく、荒れるといったことが考えられます。また、下痢をしていると便と一緒に腸液もたくさん排出されるようになるのですが、この腸液の刺激によって皮膚が傷ついて炎症を起こすということもあります。

炎症が起きている場合も患部を清潔に努める必要がありますが、石鹸などを使用すると症状を悪化させますので、ぬるま湯で患部を洗う程度にとどめるようにしてください。シャワートイレが原因であれば圧を弱くする、使用は短時間にするなどします。

治療に関してですが、患部に副腎皮質ホルモンを含んだ軟膏や抗ヒスタミンの軟膏を患部に塗布していきます。市販の薬で治したいと考える方もいるかもしれませんが、医療機関を受診し、原因を特定した状態で治療に臨まれた方が悪化するリスクは避けられますので、上記の症状があれば一度当クリニックをご受診ください。

肛門皮垂(スキンタグ)

痔とよく勘違いされる患者様も多いですが、これは肛門周囲の皮膚のたるみ、いわゆる蛇腹のようなものです。このたるみは、以前に痔(いぼ痔(外痔核)や切れ痔 等)などを発症した際に患部が腫れ、その腫れが引いていく際に皮膚が委縮してしまうことで起きるとされ、その部分がタグのようになってしまったというものです。なお、痔の発症以外にも女性の場合は、妊娠や出産後に発生することがあります。

この場合、皮膚がたるんでいるだけですので、痛みやかゆみなどの自覚症状がみられることはありません。ただそのたるみが大きくなればなるほど違和感を覚えるほか、お尻をうまく拭くことができなくなるなどの影響がみられるようになります。

治療に関してですが、症状がなくとも不衛生な状態にしておけば炎症が起きるようになります。その場合は、軟膏を塗布するなど薬物療法が行われます。また、どうしても(スキンタグが)気になって仕方がないという場合は、外科的切除となります。

当クリニックで診察する痔の種類

痔核(いぼ痔)

一般的にいぼ痔と呼ばれることが多いですが、正式な疾患名は痔核です。これは肛門付近の血流が悪くなることで鬱血し、それがこぶのように膨らんでしまった状態を言います。発症する場所によって、内痔核、外痔核に分けられます。なお、痔のタイプというのはいくつかあるのですが、その中で最も患者数の多い疾患が痔核です。

内痔核について

内痔核とは直腸と肛門の境にある歯状線から内側に生じた痔のことで、その外側にできた痔核は外痔核と診断されます。

内痔核の初期症状は、出血が見られる程度です。そして痛みを感じることなく症状は進行していき、やがて患部が大きくなると肛門から外へ飛び出るようになり、これを脱肛と言います。脱肛当初は、指などで肛門内に押し込むと戻るようになりますが、さらに大きくなると中におさまらなくなり、やがて患部に痛みが出るようになります。なお内痔核は進行度合い(重症度)によって4つのタイプ(1度~4度)に分類され、治療の仕方もそれぞれ異なります。治療の対象となるのは「2度」以上です。

*内痔核の分類(「ゴリガー分類」による)
1度:
排便時に肛門管内に膨らんでくる程度の痔核
2度:
排便時に肛門外に脱出するものの、排便が済めば自然に戻る程度の痔核
3度:
排便時に脱出し、指で押し込まないと戻らない痔核
4度:
常に肛門外に脱出している痔核
外痔核について

外痔核は肛門の歯状線の外に生じた痔核です。激しい運動をしたり、急に重いものを持ったりした後などに突然血の塊が肛門に生じ、腫れて痛みが出るようになります。多くの場合は薬物療法で治りますが、痛みが強くて大きいものは切除するか、血の塊を取り除く必要があります。

裂肛(切れ痔)

裂肛は一般には切れ痔と呼ばれ、便秘や下痢が原因で肛門上皮が切れ、そのことにより痛みや出血が伴っている状態です。

なお裂肛は大きく2つのタイプに分類されます。ひとつは急性裂肛で、これは排便時に出血や痛みが生じるものですが傷自体は浅く、症状は数日で回復します。もうひとつは、裂肛を繰り返しで傷が深くなり、やがて潰瘍になってしまう慢性裂肛です。こちらの場合は、痛みが持続し、傷の内側には肛門ポリープ、外側にはイボを形成することがあるので注意が必要です。
治療は、主に薬物療法による排便のコントロール、軟骨や座薬の使用になります。