生活習慣病のイメージ写真

生活習慣病とは

日頃の生活習慣(偏食・過食、不規則な食生活、慢性的な運動不足、喫煙・多量の飲酒、ストレス など)がきっかけとなって、発症する病気の総称を生活習慣病と言います。代表的な生活習慣病には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などがあります。

このように様々な種類の生活習慣病があるのですが、これらに共通しているのは自覚症状が現れにくく、病状を進行させやすいという特徴があります。いずれも血管がダメージを受けるようになるわけですが、放置が続けば動脈硬化を招き、さらに何もせずにいると合併症として、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心臓病(狭心症、心筋梗塞、心不全 など)、閉塞性動脈硬化症(ASO)といった重篤な合併症(ある病気に伴って起こる別の病気)を引き起こすようになります。

治療について

生活習慣病の発症が確認された患者様、もしくは生活習慣病予備軍と診断された方につきましては、この合併症を引き起こさないための治療や予防が行われます。そのためには、まず日頃の生活習慣の改善を行っていきます。具体的には食生活の見直し(食事療法)や日常生活に運動を取り入れる(運動療法)といったことです。

食事療法では、規則正しく一日三食、栄養バランスのとれた食事、適正エネルギーの摂取、塩分を抑えた食事といったことが求められます。運動療法では、息が弾む程度の有酸素運動(1回30分程度のウォーキングや軽めのランニング)をするのが効果的と言われていますが、できれば毎日継続的に行うようにします。なお、運動内容によっては健康を害することにもなりますので、内容については医師と相談するようにしてください。

これらの改善だけでは、効果がないと医師が判断すると併せて薬物療法も行われるようになります。

主な生活習慣病

高血圧

日本人の3人に1人の割合で発症するとも言われ高血圧ですが、慢性的に血圧が高くなってしまってもそれに対しての症状が現れにくいので、病状を進行させやすくなります。ただ症状がなくとも心臓から血管へ血液を送る際に血圧が高いと余分な負荷をかけていることから、その分だけ血管壁にその圧も加わるのでダメージを常に受けるようになります。そして長期に渡ってこの状態が続けば動脈硬化を招き、さらに放置となれば、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心臓病(狭心症、心筋梗塞 など)、腎不全など重病となる合併症を発症するリスクも高くなります。

なお高血圧と診断される基準ですが、外来時の血圧測定で収縮期血圧(最高血圧:心臓から血液を送り出す際の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧:心臓が拡張し、血液を送られる状態になった際の血圧)が90mmHg以上となっている場合です。

なお高血圧の原因は主に2つあります。1つは本態性高血圧でこれは原因が特定できない高血圧です。ただ現時点では、遺伝的要素に肥満や過食、慢性的な運動不足、塩分の過剰摂取、喫煙・多量の飲酒などの生活習慣が組み合わさるなどして発症するのではないかと考えられています。もうひとつの原因は、二次性高血圧と呼ばれるもので、これは他の病気(甲状腺疾患、副腎疾患、睡眠時無呼吸症候群 など)や薬の影響(ステロイド薬の長期投与 など)などによって起きる高血圧です。なお、日本人の高血圧患者様のおよそ9割以上が本態性高血圧の患者様です。

糖尿病

体を動かすために必要なエネルギー源となるブドウ糖を細胞に取り込むことができず、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなっている状態を糖尿病と言います。

通常であれば、血液中のブドウ糖を細胞に送り込んでエネルギー源にするなどの働きをするインスリン(膵臓で作られるホルモンの一種)が機能することで、食事をしたり、糖分を含むジュースを飲むなどすることで上昇した血糖値は再びバランスのとれた状態に戻るわけですが、このインスリンが働かないと血糖値は高いままです。

糖尿病は主に2つのタイプ(1型糖尿病と2型糖尿病)があると言われています。1型糖尿病は、突然発症するものでインスリンを作る膵臓のβ細胞が自己免疫反応の異常などによって破壊されることで、インスリンがほぼ分泌されていない状態を言います。若い世代の方が発症するケースが多いです。一方の2型糖尿病は中高年世代に発症する方が多く、遺伝的要素と長きに渡る不摂生な生活習慣などが組み合わさることで発症します。この場合は、インスリンの分泌量が不足している、もしくはインスリンが効きにくくなっている状態になっています。

また上記のタイプ以外にも病気や薬による影響で発症する二次性糖尿病、妊婦が発症する妊娠糖尿病というのもあります。

発症初期の糖尿病は、ほぼ自覚症状がみられません。そのため、病状を進行させやすくなるのですが、その間も血管内でブドウ糖がダブついていることで、様々なダメージを受け続けています。さらに放置が続くと細小血管から障害を受けるようになり、やがて糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害といった糖尿病三大合併症をはじめ、脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの合併症を発症させることもあります。治療では、これら合併症を防ぐための血糖のコントロールを行っていきます。

なお、糖尿病はある程度進行すると、異常にのどが渇く、頻尿・多尿、体重が減少する、疲れやすくなるといった自覚症状がみられるほか、感染症にかかりやすくなる、傷が治りにくいといった症状も現れます。こんような状態は、かなり進行しているともいえますので、速やかにご受診ください。

脂質異常症

血液中には脂質が含まれていますが、そのうちLDL(悪玉)コレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が慢性的に高い場合とHDL(善玉)コレステロールの数値が低い場合を脂質異常症と言います。なお脂質異常症と診断される具体的な数値につきましては次の通りです。

  • LDLコレステロール値≧140mg/dL(高LDLコレステロール血症)
  • 中性脂肪≧150mg/dL(高トリグリセライド血症)
  • HDLコレステロール値<40mg/dL(低HDLコレステロール血症)

このように脂質異常症には、高LDLコレストロール血症、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症の3つのタイプに分けられますが、動脈硬化との関連が最も深いとされているのがLDLコレステロールです。脂質異常症は自覚症状がほとんどありません。そのため、健診の結果などから指摘されて気づくことがほとんどです。それでもこれといった症状がないからと放置が続けば、LDLコレステロールはどんどん過剰となって、血管内でさらに蓄積、やがて血管が狭窄して血流が悪くなるあるいは詰まるなどして、脳梗塞や狭心症・心筋梗塞といった合併症を発症するようになるのです。

発症の原因については、遺伝的要素に日頃からの生活の乱れ(高カロリーや高脂肪食の食事、慢性的な運動不足 など)が絡み合うなどして発症(原発性脂質異常症)することが大半ですが、別の病気(糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患 など)や薬の使用(ステロイド薬の長期使用)などを引き金として発症する二次性脂質異常症もあります。

なお、脂質異常症と診断されたら、高トリグリセライド血症の方や低HDLコレステロール血症の方も含め、LDLコレステロールの数値を下げる治療から始めます。同数値を下げることは、HDLコレステロール値やトリグリセライド値も一緒になって数値が正常になることが期待できるためです。

高尿酸血症(痛風)

血液中にある尿酸が過多になっている状態を高尿酸血症と言います。発症の有無は血液検査で確認することができ、血清尿酸血値が7.0mg/dL以上の数値を示していると高尿酸血症と診断されます。

尿酸とは、細胞の核の成分であるプリン体が分解して発生した老廃物で、その多くは血液中で溶け、腎臓へ運ばれて尿として排出されます。しかし、血液中で尿酸が過多になると、尿酸自体が水分に溶けにくい性質でもあることから、針状に結晶化した尿酸塩として存在します。そして過多になればなるほど尿酸塩は増え続け、やがてこれが関節などに留まるようになると激しい痛み(とくに足の親指の付け根)が現れるようになります。これが痛風です。ちなみに高尿酸血症の患者様の1割程度の方に症状が出ると言われています。

なお血清尿酸血値が7.0mg/dL以上の方は、いつ痛風の症状が出てもおかしくない状態ですが、症状がなくても尿酸値が高い数値のままなら、痛風結節、尿路結石、腎障害、脳血管障害、心疾患など様々な合併症を発症する可能性が高くなります。

また尿酸が増えてしまう原因ですが、先天的な代謝異常、造血器疾患、遺伝的に尿酸が排出しにくい体質といったことも考えられますが、その他にも尿酸の元となるプリン体を多く含む食品(レバー類、干し椎茸、魚卵類、えび、かつお、いわしなど一部の魚介類)の過剰摂取、アルコールの多量摂取、肥満、無酸素運動のしすぎといったことで増えることもあります。そのため、高尿酸血症の患者様は食生活を見直すなどの生活習慣の改善もしっかり行っていくようにします。